いっとき避難場所

夏の白熊は冷凍庫の中に

女性であること

なぜにわたしの母は、わたしや弟に対してひどい振る舞いをするのだろうと思って、二十歳くらいの頃によくよく尋ねてみたことがある。

話を聞こうとすると、母はよく朝まで自分のことを話した。

 

長い話なので忘れてしまったりもしたけれど、

端的にいえば、わたしは、母は自分の女性性が認められないんだろうなと思った。

さらに女であるから、良い学校を出てもちゃんとした仕事に就くこともなく、祖父からピアノ教師にでもなったらと言われてそうなった。

祖父はわたしには漢文とか色々教えてくれたのだが、基本的に女はそんなに学校に行ったりしなくても良いと考える人であったらしい。

祖母は、学校の先生としてちゃんと働いていたにもかかわらず。

母の学歴は無駄であり、例えば看護師とか薬剤師とか、学歴が少し劣ったとしてもちゃんとプロとして働いている人に比べれば、なんとか大学文学部などというのは、パートの役にもならなったんだろうと思う。

 

母はわたしが仕事をしながら育児をしている時もほとんどわたしのことを手伝わなくて、いつでも頼りなさいと言いながら頼ると出かけるからといったり、全くあてにならなかった。

鬱になった時もそうだ。

ただ、自然な考えとして、

きっと、母は娘が幸せになったり、自分をこえていったり、女として幸せになったりすることを、全く認めないのだろうなと薄々感じていたので、あんまり頼らなかった。

ただ、学歴だけは母の学校より上のところは綺麗に落ちて、早稲田以下しか受からなかった。それでもまあ、特に天文学がやりたいとかではないし、生きて行くにはそんなに困らなかったからまあいいかなと思う。

 

 

祖母は働いていたので日中はほとんど家におらず、したがって家事は、母か叔母、お手伝いさんの3人で行っていたらしい。

女は家で趣味のような仕事をして過ごし、叔父は失敗したシゾイドっぽいインテリで、サラリーマンをしていた。

 

わたしは、小学生の頃から女のくせにとか女は手伝えとか、散々言われて育った。

女は言葉遣いもきちんとして整容し、親の手伝いをしろ。お前のような女は嫌われる、暗い女だ、ふしだらだ、あばずれだ、産むんじゃなかった。

学校でいじめられれば、みんなあなたのことが羨ましいからだ。気にしないでいなさい。

無関心というか意図的な無視だったかもしれない。
…それにしても、子供心に、なんで小学生の子供に対して女のくせにとかいうのか理解できないと思って日記に書き連ねていた記憶がある。 

学校に行かなくなったときも、女はまあ行かなくてもいいけれど、とあからさまに言われた。

 

働くとか自立するとかそういうイメージが母は希薄だった。弟が大学を出る出ないの時も、就職して自立するという考えがほとんどないようだった。

弟が死んだ時に、母親の元で死ねるのは幸せだと言ったくらいでわたしはびっくりしたのだけれど、おそらく、母自身が、母の家庭から自立できないまま大人になったのだと思う。

 

まあ、それはそれで仕方ないかなと思う。

 

そんな話はそういえば全くしなかったな病院では。

 

自分が二十歳くらいで彼氏ができるようになると(わたしは若い頃は割と綺麗でいろんな人に声をかけられたりしたので)、

母はわたしにほとんど無頓着になった。家に戻ってこなくなったのもあるかもしれないけれど。

家に帰りたくないわたしは男の子の家に入り浸り、ついにはアルバイトをして自立した。

 

それなのに、離人症は治らなかったのだけれど。

 

わたしは母に頼らなかった。母もわたしに頼られることが好きではなかったと思う。

 

そういえば、わたしが先生に依存になった、どうしようと相談した時に、カウンセラーは依存していいんですよ!といった。

でも医者はおまえは病院に依存するのか(依存するな)と言った。

嗜癖なら依存していることを認めないといけないなと思って言ったんだけど、思いがけなくそう言われてわたしは驚いた。

"逃げるのか、忘れるのか。仕事に依存して、次は病院に依存するのか。"

 

今思えば確かにそう

辛いことから逃げて会社で働いていた

自分の恐怖とか悲しかったことを払拭したいように働いていた。

それが依存先が確かに病院になった。

よくはないな。

 

ただ会社に依存してても誰も困らないけど

病院に依存してたらかなり困る

 

そうして、なんだかわたしは母を思い出したのだ。

 

さらにいえば、医者はわたしの祖父に少し似ていた。…少しじゃないな。

だからわたしの欲望みたいなものは、まるで祖父を母から取り上げるような、そんな感じのものだったのだ。

それで、わたしは居合わせた女の人たちから責められると、泣きながら逃げるのだ。

 

そんな感じもあった。