いっとき避難場所

人間万事塞翁が馬

ずれていることに気がつく

 自分の感覚がおそらく、社会人一般的なものかそうとうにずれてきているのではないかとふと、思った。

 社会から外れてほぼ一年。

 

 …わたしは、通院している間、自分の、それまでの人生や、社会人としての仕事や生活について、カウンセラーとか、医師とかに語った。

 

 

  …自分の現実はうまくいくこともうまくいかないこともある断片的なものの連続だ。

 でも、わたしは自分の人生の辛いことや思い出すだけでパニック発作が再発するような過去の出来事を、診察室で語り続けるうちに、それはだんだん、ちょっとした悲劇的な物語になって、おそらくどんどん現実的なものから乖離していった気がする。

 自分がギフテッドで、特別な人生を歩んでいて、皆と同じではないのだというような気持ちがしてきていたと思う。

…今思えば、不可思議だ。

社会で挫折して、病院でそんなことを考えるのは、客観的に考えてもおかしい。

 

 確かに、わたしという存在は生活歴的にも平均的なものからは外れている(不登校期間が長かったりする)けれど、毎日食べて寝て子供の世話をして仕事をするという繰り返しであることは多くの人と大して変わらない。

 

 そのうえ、現実のわたしは、できないことや不得手なことがたぶん人よりもおおくて、もしかしたら向いてないかもしれないけど好きな仕事にかじりついて十年くらい、皆に助けてもらってなんとかやってきただけの人間なのだ。

育児だって、あっぷあっぷしているのを周りの人がうんざりしながらも助けてくれた。

 でも、仕事は育てにくい子供の育児と両立できずに破綻して、休職のために心療内科に駆け込む羽目になった。

 駆け込んだ心療内科で、自分の過去の物語を延々と話し始めて、そのうちに自分の中に別人格やら訳の分からない状態が入り混じり始める。馬鹿みたいだ。

 

 …小さい告解室の中で自分のことを物語として語り続ける中でわたしの自我はおかしな方向に拡大して、まるで、自分はもっとなんでもできるはずなのに、不釣り合いな仕事を十年も続けてきた人みたいな気分になっていた。

 

 人の中にそういう気持ちが多少あるのは、仕方ない。

 でも、生きているうちに、会社や家族に叱られたりいろいろあって、

ほんとはできるはずとかいうようなことよりも、現実にできていることはなんなのか、に目を向けるようになって、今得ているもののありがたさを感じるようになって、そうして、…わたしは人の親になったのではなかったか。

 

今思えば、 馬鹿みたいだ。

なんでそんな、現実離れしたことを考えていたのだろう。

 

誇大妄想狂じゃあるまいし、できるはずのことよりできていることの方が大事に決まっている。

…やりたいことはやりたいことだが、自分の気持ちや現実と相談して、それでも諦めきらないことなら冷静に判断して決めるべきだ。

 

カウンセリングというのは気持ちよく自分の苦痛の物語を語ってありもしない能力の発揮できる可能性を確信するための場所ではないはずだ。

社会からドロップアウトしてしまった人間が、それまでの人生を自分語りじゃないけど語り直すことにハマって、生活の基盤を失って、挙句に医師に陽転して依存して、本当に馬鹿じゃないのか。

 よっぽどわたしは、カウンセリングに向いてなかったのだと思う。

 わたしはたぶん、正反対のことを語っていた("おそらく今の状況ではわたしは仕事はできない"とか)だろうし、それはたぶん正しいけれど、その言葉の裏側で、

実際の自分の望みというか安易な夢想は、なんとか言葉に押しとどめられているだけで、社会から離れている間にむくむく大きくなるだけだった。

 本当に誇大妄想狂みたいだ。

自分というものは、多くの他人を鏡として理解できるところがあるのに、それがほとんど失われて、一部の人…黙って聞いてくれるカウンセラーとか、医師とかに依存している状態だったのかもしれない。

 

現実的に、育児が大変で両立できないとか、そういうのは仕方ない。

でも、問題は、ちゃんと定職があったのに、向いてないという理由に背中を押されるようにやめたことだ。

 

 わたしはそんなに、生きるのが上手じゃない。

 

失ったものは仕方ない。

今、わたし自身は多分ボロボロで、社会的な感覚とずれまくっているから、今すぐ失ったものを取り戻すことは難しいだろう。

もしかしたら一生無理かもしれないが、

とりあえず、わたしは本当にずれているんだろうな、と思った。

 

そうか。

メンタルとはおそらく、こういうことだ。

 

 

仕事がうまくいかなかったのは仕方ないし、

それはおそらく、わたしのその時分の能力的に問題がある。

 

あんなに怒りまくって会社を辞めて、一体どのつらさげて同じ業界に戻れるのかと思うけど、たぶん戻れないだろう。

昔はPSWも惹かれたけど、今はもうとても。

 

(病院をやめたのも怒りまくってたけどこれは、結果的にやめられたから仕方ないことなのだと思う)